ポートアイランド観光と建築探訪~Part1

気持ちのいい穴場の観光スポットが点在

ポーアイしおさい公園にあるBE KOBEはメリケンパークより静かで記念写真の穴場です

安藤建築2物件の見学だけでは勿体ないので、初めてのポートアイランドの観光を兼ねて駆け足で島めぐりをしてみました。
島とは言え、さすがに重いカメラバッグを肩にかけてテクテクと歩いていては時間もかかるし疲れますので、車で移動するのが手っ取り早いです。レンタカーを借りるか、タクシー貸し切りの時間制で回ってもらうと2~3時間で主要なスポットを見て回れますが、動物王国やプラネタリウムなど、点在する施設の中までゆっくり見て回りたい場合は、まる1日かけてゆっくり観光するのも楽しいでしょう。

神戸のメリケンパークのような人込みで溢れた観光地に疲れた場合は、2日目にポートアイランドをゆっくり観光すると、穴場的な気持ちのいい場所にも出会えます。

なお、今回は安藤忠雄の作品見学と街歩き撮影がメインでしたので、観光施設の中まで見て回る余裕はなく、外から見た建物外観を撮影して回ったので、それらをフォトギャラリー的にご紹介していきます。

まずはポーアイに行く前に神戸市役所へ

こちらは望遠レンズでポートアイランド方向を撮影したもの

ポートアイランドの島全体を高いところから眺められる撮影スポットは、当然ですがポートアイランド内ではなくて、島の外の高いところです。そこで、おすすめなのが神戸市役所の1号館24階にある展望ロビーです。

展望ロビーからは主に南側の眺望が絶景で、東遊園地からポートアイランド、晴れていれば対岸の紀伊半島まで見えます。西はハーバーランドの街並み東は六甲アイランドやHAT神戸の街並みが見えるのですが、24階という高さは、低すぎず、高すぎずで、街並みを見るにはちょうどいい高さです。

そして、なんといっても、ここは無料で休日も登れますのでおすすめです。ポートタワーだと家族で数千円、ランチ代くらいかかりますから。

望遠レンズでなく肉眼ではこんな感じの眺望

双子?の大橋~神戸大橋とポートピア大橋

実は私も最初はわからずにこれが「神戸大橋」なんだと思い込んでいましたが、よくみると橋は2つ並んでおり、正しくは「神戸大橋」と「ポートランド大橋」です。
この2つは同時にできた双子の大橋ではなく、先に神戸大橋ができて、そのあと、数年後にポートライナー専用の「ポートピア大橋」ができたということで、「兄弟」だか「姉妹」だかどちらでもいいですが、とにかく、知らずに見ると「神戸大橋」がひとつあるだけと錯覚する不思議な橋です。

ポートライナーが走っているのが見えますので、手前がポートピア大橋ですね。
神戸大橋は日本初のダブルデッキアーチ型鋼橋ということで、橋が二層になっていますが、なかなか美しい形です。できれば夜景を撮影してみたかったですが。

気持ちのいい穴場スポット「ポーアイしおさい公園」

神戸大橋の次に行ったのが、ここ「ポーアイしおさい公園」です。ポートアイランドでも海が見える公園としては、ここが一番の気持ちのいい場所ですが、日曜は学生とかもいないようで、人混みが苦手な方には、とても静かで穴場スポットです。

メリケンパークのように観光客で混雑してなくて、とにかく気持ちのいい穴場です。

パークアイランドを目指す「ポートアイランド・リボーンプロジェクト」

現在、神戸市ではポートアイランドが震災復興後からも立ち直ったとはいえ、まちびらきからは長い年月が経過し、他の人気の観光地から比べるとやはり少し寂しい状況にあるため、神戸空港の国際化といった大きなトピックと歩調を合わせるように、島全体の活性化を目指して「ポートアイランド・リボーンプロジェクト」なるものを立ち上げているようですが、観光客が押し寄せてごみごみするような活性化ではなく、今のほどよい気持ちよさを残しつつ、まちの個性を生かした活性化を期待してます。

プロジェクトの中でも、東京藝術大学美術学部建築科 准教授の藤村 龍至 氏がモデレータとなって「パークアイランド」を目指すというコンセプトの提案もされているようですが、このエリアにマッチしたとてもいい案だと感じました。

できれば、「緑とアートのパークアイランド」みたいな「アート」の要素も入れてはいかがかと思いましたが、中途半端なパブリックアートの設置って、結局はいつでも見れてありがたみがなく、集客にあまり役に立たないので敢えて入れてないのかもですが、東京芸大の先生ですから、考えてないはずはないですよね。中途半端にやらずに、いっそ直島のように徹底してアートも取り入れれば、「アート」の集客効果はあるんじゃないでしょうか。

目指せ、緑とアートのパークアイランド!

https://www.city.kobe.lg.jp/a74227/pi_reborn.html

 

もうひとつのBE KOBE

Eに見えるのは目の錯覚を利用してます。

もうひとつ、というのは「メリケンパーク」にある大人気の撮影スポットの「BE KOBE」に対してのもう一つ、ですが、「BE KOBE」のモニュメントは、現在4つ?あるらしいです。
メリケンパークの方はとにかく観光客が入れ替わり立ち替わり撮影していて、なかなか順番待ちが大変な状況でしたが、こちらは観光客でごった返すような状況ではなく、すぐに撮影できましたので、穴場スポットです。

「BE KOBE」モニュメントっていくつある?

人混みが苦手な方にはおすすめです。天気がいいと、とにかく広々として気持ちがいい場所で、大学の建物でなく、リゾートホテルなら是非泊まってみたくなりますが…

さて、BE KOBEの写真ですが、これはネットにも豊富にありますので、敢えて全体が写らないアングルで撮影してみましたのですが、後でみてわかったのは、遠くから見ると「E」に見える文字が実は「E」ではないことに気が付きました。全ての文字は、遠くから見た時だけその文字に見えるようにできていたんですね。

BE KOBEとは、「神戸の様々な魅力の中で、一番の魅力は人である」という願いを込められた言葉をかたどったモニュメントだそうで、 2017年に神戸開港150年を記念してメリケンパークに初代BE KOBEが設置されたようです。

因みにこのモニュメントって誰が設計デザインしたのか調べてみました。
それがこちらの京都にある空間デザイン等を手がける会社「株式会社 陶額堂(とがくどう)」です。
http://www.togakudo.co.jp/overview.html

建築空間に付随する美術を構想・制作・設置する仕事をされている会社のようで、ナルホドこういう会社が作っておられるんですね。

ホテルパールシティからの眺望

高層の神戸ポートピアホテルに宿泊してみたかったのですが、諸般の事情でホテルパールシティに泊まりました。
「ホテルパールシティ」は神戸ポートピアホテルほどの高層ホテルではありませんが、上層階に宿泊すれば、それなりにポートアイランドの南公園駅周辺の美しい夕景や夜景、朝焼けを楽しむことができます。

ラッキーだったのは、今回撮影して回った中の目玉のビルである、安藤忠雄の「ジュンポートアイランドビル」がたまたま目の前の位置の部屋だったこと。ドローン無しで安藤忠雄建築の空撮を写真に収めることができました。
また、左中央の黒っぽいビルである、シャルレの本社ビルは、昔の写真を見ると屋上緑化もされていたようでしたが、今は無くなっていました。

他にも、UCC上島珈琲の本社ビルやユーハイムの本社ビル、IKEA神戸店の建物等も見えますが、どのエリアも木々が多く、整然としていて、公園の中のような気持のいい美しいエリアです。

神戸側の観光地のホテルに宿泊するのもいいですが、建築好きな方はポートアイランドのホテルに泊まって、こういう眺望を見てみるのも面白いかと思います。

ホテルパールシティからの早朝5時くらいの朝焼けです。

中埠頭方向の朝焼け

ポートアイランドの中埠頭方向の朝焼けを望遠レンズで撮影してみました。肉眼ではここまで近くには見えません。
埠頭の先に見えるのは、もうひとつの人口島、六甲アイランドのビル群。

大学等の学校も多いポートアイランド

ポーアイしおさい公園にあるリゾートホテルのような美しい建物の大学が、兵庫医科大学と神戸学院大学です。
どちらも、しおさい公園に隣接していて、とても美しい気持ちのいい建物です。
こんなところに通学すれば、きっと毎日楽しく勉強もはかどりそうです。
最近では、ポートアイランド内に、こうした学生のための学生寮のビルとして建設中の物件もあるようです。

神戸学院大学

神戸学院大学

リゾートホテルのように見えますが、実は神戸学院大学です。

ポーアイしおさい公園と神戸学院大学

ポーアイしおさい公園と神戸学院大学

神戸学院大学のキャンパス内

神戸学院大学のキャンパス内

まるで外国の王宮のような空間が広がっていました。

兵庫医科大学の神戸図書館

兵庫医科大学の神戸図書館

外観だけでは図書館には見えませんが、難しい医学専門書籍等がずらりと並んでいるのでしょうね。

神戸学院大学

神戸学院大学

とにかく日本とは思えない素晴らしい光景

組織系の大御所設計事務所が頑張っているポーアイ

このリゾートホテルか王宮かのような素晴らしい神戸学院大学の設計を調べてみました。
やはり、こういう地盤改良等も必要な大規模な建物は大御所企業の株式会社日建設計が頑張っていました。
日建設計と言えば、住友系の由緒あるそして歴史も長い、日本を代表する組織系の大きな設計事務所です。住友系のビル以外にも、私たちが日頃から目にする大規模な建物の中にも数えきれないくらいの実績があります。
神戸でいえば、神戸ポートタワーも神戸市庁舎も、この次に掲載した、スパコン「富岳」のある理化学研究所計算科学センターも日建設計ですね。さらには、東京タワーも東京ドームも、東京ミッドタウンも、日建設計、そして、安藤忠雄がデザイン監修にも参加した「東京スカイツリー」も日建設計でした。

 ・日建設計の実績事例~Wikipedia

神戸学院大学の夕景空撮写真、なかなか綺麗。
http://www.style-matec.co.jp/works/kobegakuin/http://www.style-matec.co.jp/works/kobegakuin/

 

動物園、スパコン「富岳」、そして巨大な地球儀がある甲南大学

しおさい公園から少し離れて、島の南側に移動してみると、動物園もありました。
場所は、あのスーパーコンピューター「富岳」がある計算科学センターの近くです。神戸どうぶつ王国は、カピバラやカンガルーへのえさやりなど、動物とのふれあいが楽しめる動物園のようです。

スパコンの研究施設の近くに動物園があるというのも不思議な気がしますが、ひとつひとつの敷地が広くて余裕があるポートアイランドですから、近いと言ってもそれなりに距離はあります。

ポートライナーの駅でいうと「計算科学センター」という駅なのですが、このあたりには、「神戸どうぶつ王国」、その隣に「神戸大学統合研究拠点」その隣がスパコン富岳の「理化学研究所研究科学センター」、そして大きな地球儀がある「甲南大学」のキャンパスがあります。

「神戸どうぶつ王国」から、さらに神戸空港方面の海岸方向へ行くと「エスペランサ神戸フットサルパーク」があり、このあたりの土手に上ると、神戸空港へつながる「神戸スカイブリッジ」を眺めることができます。

これらの建物も、日建設計以外に、日本設計等の組織系の大御所の設計が目白押しです。

神戸どうぶつ王国

神戸どうぶつ王国

理化学研究所計算科学センター

理化学研究所計算科学センター

スパコン「富岳」があります。

甲南大学ポートアイランドキャンパス

甲南大学ポートアイランドキャンパス

大きな地球儀が有名。天気が良すぎて逆光写真しか撮れなくてすみません。

エスペランサ神戸フットサル練習場

エスペランサ神戸フットサル練習場

防潮堤と神戸スカイブリッジ

防潮堤と神戸スカイブリッジ

土手からは、1,000年に一度の津波への対策も終わったという防潮堤、その向こうに神戸スカイブリッジが見えました。

先端医療産業等が集積する南エリア

計算科学センター駅と医療センター駅のある島の南側エリアは、医療産業都市として発展している地域です。
このあたりになると、医療系企業の研究施設のビルや病院が集積した地区であり、「神戸どうぶつ王国」以外にこれといった観光施設等は特にありませんので、動物園目当てやスパコン富岳の見学とか以外で、このあたりを観光で訪れる方は殆どいないと思われます。
しかし、この地域での研究開発が私たちの健康や命をまもってくれているのかもしれませんので、感謝を込めて、一応、急ぎ足で、いくつかのビルや病院を写真に収めてきました。

建築的視点からは、組織系の設計したビルが大半と思われますが、とにかく敷地が広いので、どこもスッキリと大きく建物全体がグルリと見渡せる目立つ建物ばかりです。

神戸市立医療センター中央市民病院

神戸市立医療センター中央市民病院

兵庫県立こども病院

兵庫県立こども病院

良く見ると個性的な外観の病院です。

千寿製薬株式会社 神戸イノベイティブセンター

千寿製薬株式会社 神戸イノベイティブセンター

日本ベーリンガーインゲルハイム

日本ベーリンガーインゲルハイム

トーカロ株式会社

トーカロ株式会社

溶射技術(表面改質技術だそうです)の国内シェアトップの企業。

日本の近代建築の歴史を垣間見るビルも

そんな中で、一際、異彩を放っていたのが、理化学研究所融合連携イノベーション推進棟(RIKEN IIB)です。
一瞬、銀座のブランドショップのビルかと思うような外観で、ポートアイランドのこのエリアのビルでは特に個性的です。
ここは、「石本建築事務所」の設計で、創立者が「 石本喜久治」という「分離派運動」の金字塔と評される建築家を祖とする、けっこう大きな設計事務所。
実はすぐ近くにある「神戸大学 先端融合研究環 統合研究拠点アネックス棟」のビルも石本建築事務所のビルでした。

理化学研究所融合連携イノベーション推進棟(RIKEN IIB)

理化学研究所融合連携イノベーション推進棟(RIKEN IIB)

神戸大先端融合研究環統合研究拠点

神戸大先端融合研究環統合研究拠点

「分離派建築会」というのはかなりの建築好きな方でないとご存じないかと思いますので、こちらをご紹介しておきます。
けっこう日本の建築業界に与えた影響は大きいものがあるようです。

「分離派建築会とは何か?」
https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/22701

2020年に行われた展示会のタイトルが「分離派建築会100年展、建築は芸術か?」、これはなかなか面白そうで、知ってれば見に行きたかった内容です。

要するに「分離派」というのは、「建築は芸術ではない」と主張していた工学偏重派の動きに対して、建築の芸術性を主張したもので、「分離派」という名称は、石本喜久治らが、大学の建築史講義でウィーン分離派の話を聞いて感激したことから名付けたらしいです。
ナルホド、このRIKEN IIBのビルにもその精神が脈々と引き継がれているようです。

私は建築は素人のミーハーな建築ファンですので、「分離派」なんて深く調べたこともなくよく知りませんでしたが、この建物をみて改めて日本の建築の歴史を勉強しました。建物を見ることで、こういう歴史に触れることができるのも、素人ファンならではの楽しみ方ではあります。

とにかく、このビルは安藤忠雄も真っ青、というくらい、けっこう攻めましたね。
まあ、フランクゲーリーあたりだと、「フーン」って感じくらいかもですが、でもかなりな建物オーラを放ってました。分離派と脱構築主義か…このビルの隣にメリケンパークにある「フィッシュ・ダンス」があったらもっと面白いかもですが。

メリケンパークにある、フランクゲーリーのフッィシュダンス
大企業の本社が集まるポーアイ「南公園駅」周辺をご紹介