まさかのフランク・ゲーリー×安藤忠雄~フィッシュ・ダンス
神戸の人気観光スポットを建築とアートの視点からご紹介
神戸屈指の観光スポットの建築とパブリックアートを撮影してきました。今さらなくらい人気の観光地なので、建築やアート好きな観点からご紹介したいと思います。
中でも外せないのが、メリケンパークでひと際目立つ、この巨大な鯉のパブリックアート。
その名も「フィッシュ・ダンス」って、見たまんまのド直球な作品名ですね。小難しく捻ったりしないんですね、ゲーリーさんは。
そう、この巨大な踊る鯉のオブジェ(クジラでなくて鯉!)の作者は、あの世界的建築家のフランクゲーリー、そして監修が安藤忠雄なんですね。
この踊りはねる鯉の隣接する建物もフランクゲーリーなのか、ちょっと調べてはみたもののよくわかりませんでしたが、鯉の方は間違いなくフランクゲーリー作品です。
さすがに、どこにもコンクリート打ち放しも〇も□も出てこないので、言われないと安藤先生が関わってるとはわかりません。まあ、兵庫県立美術館の青りんごも、あそこになければ、安藤さんかどうかってわかりませんから、当たり前ですが。
建築的視点から詳しいのはこちらのサイト。
https://kobecco.hpg.co.jp/39568/
この作品は、最初はシルバーで塗装されていましたが、1999年に錆対策のためピンクに塗り替えられた際に、フランクゲーリー等の建築家らからの批判を受け、2005年に元のシルバーに戻されたんだそうですが、今はピンクでもシルバーでもなく、錆で赤茶色でした。
しかし、なぜ作者に相談もせずにピンクに塗っちゃったのやら…疑問に思って、少しネットの情報を探してみたところ、こんな2004年の古いネット情報がありました。
「当初はグレー1色だったが、99年春にさび止めを施す際、管理担当者がピンク色に塗り替えたらしい。なんと、その際にはご丁寧にも、黒っぽく縁取った青い目玉まで描がかれていた。これを知ったゲーリー氏は、「侮辱された」とのコメントを専門雑誌によせているという。」
どうやら素材的に錆を防ぐために数年毎にお色直しをしないとならないらしく、それがもう当たり前になっていたので、いちいち作者に相談が必要なんて思わないし、フランクゲーリーだかにも興味も関心もない現場の方が、良かれと思ってやったんでしょうね。やれやれ…
こういう巨大で常識外のアートって、やはり長年の間に維持をめぐっていろいろありますねえ。
脱構築主義と安藤忠雄って奇跡のコラボなんだけど…
モニュメントだけでなく建物も踊っているかごとくのデザインスタイルなのがフランクゲーリーの脱構築主義。
安藤建築とは似ても似つかない内容なので、このお二人のコラボ作品がこの神戸にあるという奇跡を、もう少し地元民の皆様も誇っていいような気がしますが、期間限定で高いお金を払って見に行く美術展と違って、パブリックアートや建築物のようにいつでも見れる「変なもの」をいちいちありがたがる人はそうそういない、というのは日本中、いや、たぶん世界中、どこでも同じですね。
バンクシーの「自分の作品をオークションでシュレッダーにかける」という行動の風刺もそこにあるのでしょうから。
さて、この「フィッシュ・ダンス」ですが、1987年に神戸港開港120周年を記念して設置されたようで、これってJUNポートアイランドビルの竣工の2年後というのが面白いですね。
安藤先生もこのころから既にいろいろやられてたようですが、コルビュジェやミースのシンプルモダン建築を独自のスタイルで発展させた安藤作品とは似ても似つかない作品です。
安藤忠雄って頑固なイメージですが、脱構築主義のフランクゲーリーと一緒にお仕事したり、と自分のスタイル以外は認めないよ、みたいな頑固さは逆になくて柔軟な方なんですね。
でも、逆に、それが国立競技場のザハ・ハディッド案を選んで揉めたり、大阪丸ビルのフェイク緑化を容認したとボロクソに批判されたり、と言ったことにもつながっているかもですが、やはり頭の柔軟性が無い人なら、これほど世界で評価されるような作品を生み出してはいないでしょう。
そもそも、安藤作品そのものが、使いづらいとかの批判を受けるアート的要素の強い建築家ですから、こういうアートオブジェに携わる機会が多くても何の不思議はありませんが、アートオブジェは建築物と違って「使いづらい」なんて批判を受けることがありませんが、これだけデカイと維持費もかかりそうで、きっとそういう批判もどこかであったでしょうね。
使いづらいとか維持費がかかるとか、価値観が異なる不特定多数の人が関わる大きな建物やオブジェは、いつの世も批判の的になるのは避けられない宿命の一つです。
でも、地元の人にはもう珍しさもなくなって忘れ去られたのか、今は殆ど話題になることもないらしいですが。
安藤忠雄の脱構築主義的建築を見つけた!?
こちらは、言わずと知れた安藤忠雄の代表作の一つ、表参道ヒルズを正面入り口付近から見上げて撮影したものです。
普通に歩いている視線では、ブランドショップの入るガラス張りの商業ビルという感じで、表側はコンクリート打ち放しもないし、かつての□と〇の直線と曲線の組み合わせもなく、コンクリートの開口部を作るブリッジも見当たりません。
ところが、遠目には普通のガラス張りの商業ビルっぽい建物をこの場所から見上げてみると、そのイメージは安藤忠雄による「フランクゲーリー的=脱構築主義的」なアプローチ、とも思えるような「ねじれ」た箱の積み木になっているのです。
安藤忠雄がコルビュジェの「サヴォワ邸」と「ロンシャンの礼拝堂」を見て「同じ建築家がつくったとは思えない」と感じたことが、同じようにここで再現されていると感じたのは私だけでしょうか。
1985年竣工のジュン・ポートアイランドビル、1989年のラ・コレッツィオーネを並べてみると、まるで双子のビルが如くに、箱のねじれはなく、安藤忠雄の得意技の「□と〇」と「コンクリートのブリッジ」がビルの特徴を形作っています。
こういうデザインは、この2棟以外にも数多くつくられて安藤忠雄のひとつのパターンのような定番になっていましたが、20年近い歳月とともに、安藤建築も徐々に姿を変えています。
このように、時の流れとともに、時代が求めるものも、建物のデザインも変わっていくものですが、表面的なデザインは変れど、その中で変わらない普遍的な思想を込めて表現しつ続けている建築家が安藤忠雄なのではないでしょうか。
その外見的変化と変わらぬ姿勢をフォトギャラリーにしたページもご覧ください。