大人が賛否両論の「こども本の森」は子供には大人気!?
神戸市役所の24階展望ロビーに上ったついでに、すぐ近くの公園にある安藤忠雄の「こども本の森 神戸」を撮影してきました。
「こども本の森 神戸」は安藤忠雄が自費で寄付したという建物ですが、アンチ安藤派からは、これも恰好の批判の的となった物件のようです。
何といっても、「公共の図書館」という捉え方をされてしまうのは当然のことなので、本来の図書館のあり方を知っている人たちからは、次のような批判を受けてしまいます。
・ガラス張りの建物はあり得ない。直射日光で棚の本が焼けてしまう。
・子供どころか大人の手にも届かない高さの棚にずらりと本を並べてある。
大体この2つの点で批判されているようですが、建物を寄付したと言っても、神戸市の運営維持費がかかるから、さらに「こんな図書館もどきを寄付して私たちの税金が無駄遣いされている」みたいな批判も浴びています。
2番目の「手が届かない場所に置いてある本」というのは、実際は、飾るためのダミー本らしいので、そうだとすれば、手が届かなくても焼けても問題はないのですが、そうわかると今度は「収納スペースを無駄遣いしている」と批判されるらしい…
要するに、良いところ、その価値を一切理解しようとはせず、「とにかく、こんな有名建築家と言われる人が建てる建物はどれも使いやすさを無視していて気に入らない、建物に芸術性なんて必要ない、コンクリート打ち放しとかをありがたるなんて頭がおかしいんじゃないか」という全否定、そういう人がアンチ安藤派の大勢なのかもしれません。
そういう人たちと闘っても無駄な気がしますが、そこをあきらめないのが「闘う建築家(ボコボコにパンチ浴びて叩かれてもダウンしない建築家でもありますが…)」安藤センセイの凄いところなのなか、とか思ったりしますが。
ビヨンセ夫妻が284億円で安藤住宅購入~世界ではもはやカリスマ
「世界のANDO」も国内では、「使いづらい」だの「無責任(オリンピックの国立競技場問題とかの批判)」だのと、けっこうボロクソに叩かれていて大変そうですが、ご本人は、そんな批判などはものともせずに我が道を行く、という感じで、ご高齢でガンも患いながらも、まだまだお元気に仕事されておられるようです。
とにかく海外セレブの間での安藤人気はすさまじいものがあり、つい最近も、アメリカのマリブビーチの安藤忠雄設計の住宅を、あのビヨンセ、ジェイ・Z夫妻が284億円で購入したり、女優のキムカーダシアンがわざわざ大阪の安藤事務所を訪問して自宅の建築設計を相談したとかの話題があったりと、今や世界ではカリスマ的人気を誇る過熱状態なのです。
まあ、ビヨンセ夫妻は二人で4千億円くらい資産があるとかないとか、事実はわかりませんが、おそらく284億円なんて「TADAO ANDOに住めるなら安いもんよ」、みたいな感じかもですが。
とにかく、「TADAO ANDO」に住むことがセレブのステータスになっているくらいの人気ぶりです。
これがビヨンセが購入したマリブビーチの住宅
https://casabrutus.com/categories/architecture/366556
Google mapで上から見ることもできます。マリブビーチでも一際目立つ、安藤オーラを放っています。
Google Earthで「27716 Pacific Coast Hwy, Malibu 」の住所で探すと3Dで見ることもできます。
「こども本の森」はいわゆる「図書館」なのか?
さて「こども本の森」に話を戻しますが、果たしてここは世間一般に認識されているところの「図書館」なのでしょうか。
だとすれば、確かにさきほどのご批判もごもっともな指摘のように思います。
しかし、名前がそもそも「図書館」とはなっていない「本の森」です。
実は、予約制だと知らずに除いたので、中までは入っていけなかったのですが、入り口で撮影許可を頂けて、少し内部を覗いたところ、とにかく「静かに本を読む図書館」というイメージではなく、こどもの託児施設のような感じで、子供たちも嬉々として楽しそう。
私がのぞいた瞬間だけ、たまたまそうだったんだろうという雰囲気ではなく、きっといつもこんな感じなんだろうと思います。
そう、つまりここは「こどもが静かに本を読む図書館」ではなくて、「本の森」に囲まれて、子供が遊園地のように本に親しむ場所なのでしょう。こどもが本に親しむ機会を得て読書が身近なものとなり、やがて大きくなってそれこそ本当の「図書館」を有意義に活用するような本が好きな大人に育つ、そんな願いが込められた場所だとすれば、少しぐらい焼けてしまう本があっても、手が届かないところに本が飾ってあってもかまわない、そういう価値観で作られた場所なんだろうと思います。
まあそれでも、今の時代、「少しくらい本が焼けてもいい、なんて、本を侮辱している、貴重な資源を無駄にするような価値観は許されない」みたいに批判されるんでしょうね。世知辛い時代ですから、それも仕方ありませんが。
しかし、安藤忠雄が闘い続けている相手は、本も読まず、多様な価値観が混じりあう世界に目を向けることもなく「古い常識で凝り固まってしまっている日本の大人」であり、こどもたちに伝えたいことは「そんな大人にならないように、若いうちからたくさん本を読んで勉強しなはれ」ということなのです。
だから「こども本図書館」ではなく「こども本の森」なんですね、ここは。
ところで「こども本の森」という施設は、実は、今のところ4ヶ所あるんですね。
この「神戸」の他に、大阪の「中の島」、また震災復興支援の一環で「熊本」、岩手の「遠野」と全て安藤忠雄先生の寄付活動やサポートで実現しています。
そして、現在、北海道大学でも5つめの「こども本の森」の準備が進んでいるようです。こちらも実現するといいですね。
https://www.hokudai.ac.jp/fund/projects/project150_03/